講社概要
浄土真宗は聞法が第一といわれるように、み教えを聞くということがもっとも大切です。浄土真宗の聞法を支える組織は、二つあります。一つは、寺院です。もう一つは、「講(講社)」組織です。
講社は浄土真宗の教えにもとづいて愛山護法の思いから本山本願寺を護り、積極的に協力し、いかなる時代にあっても念仏一つで救われていく如来さまのお慈悲の尊さ有難さを、後の世まで広くつたえるため活動している本願寺の団体です。
講・講社の意味と由来
講とは、元来、仏教の講話を聞くために集る人々の集会を意味し、僧侶が仏教経典の意義を講義する、講義の「講」です。講社とは団体を意味します。平安時代には信者が、毎月決まった日に集まって、聞法の寄り合い、つまり「講」が行われるようになりました。
本願寺における講の源流
宗祖親鸞聖人の時代には御同行は法然聖人の御命日の25日に集まり、「念仏勤行の日」といって、お互いに御法義を喜び、念仏を相続するとともに、各自が報謝の懇念を醵出していました。それを「念仏のすすめもの」と申します。このことは宗祖の「また、御こころざしの銭三百文、たしかにたしかにかしこまりてたまはりて候ふ。」〔浄土真宗聖典(註釈版)750ページ〕
「護念坊のたよりに、教忍御坊より銭二百文、御こころざしのものたまはりて候ふ。さきに念仏のすすめのもの、かたがたの御中よりとて、たしかにたまはりて候ひき。ひとびとによろこび申させたまふべく候ふ。この御返事にて、おなじ御こころに申させたまふべく候ふ。」〔浄土真宗聖典(註釈版)804ページ〕
というご消息にあらわれております。ここに護持団体としての講社の萌芽がみられます。
御開山聖人御往生の後は、全国各地の御同行は愛山護法の御懇念を大谷本廟に運んでくださっていたのです。講という言葉は第3代の覚如上人がお書きになった『報恩講私記(式)』に初めてでてきますが、ここには、講の精神が愛山護法にあることが示されています。
講社のこころ
宗門において門徒集団として講が本格的に現われてくるのは第8代蓮如上人の時代です。蓮如上人は文明18年(1486)正月4日に加賀国能美郡の四講の集会に対し、
「そもそも能美郡同行中について、四講ということを始めて、当流の法義の是非邪正も讃嘆すべき興行これある由きこえ候、誠にもって仏法興隆の根元、往生浄土の支度、殊勝に覚え候。」という「御文章」を送っておられます。さらに四講の集会に対して「四講会合のとき、仏法の信・不信の讃嘆のほか、世間の沙汰しかるべからず候。」と講のこころをお示し下さっております。
本願寺と講社
蓮如上人以降、実如上人、顕如上人と時代を経るに従って、講の結成はますます多くなっていき、江戸時代になると、全国津々浦々まで護法義が行き渡るとともに、全国各地に愛山護法の火が燃え上がり、講社の数は数千を超えるに至り、本山は講社の懇念によって、幾多の苦難を乗り越えて護持されてきたのです。
講社は毎月一度、または再度、講衆が集合して、御法話を聴聞し、信心の行者を生み出し、本山に対しては、本山護寺に必要な財施、建築、修復、法物、法要儀式に必要なもの、衣食住に関するもの全ては勿論のこと、宗祖御正忌や歳暮、中元等定期に一定額懇志を上納し、仏恩報謝の懇念を運ばれました。これは、本願寺が権力者や寺領の寄進によらなかったので、講社の方々の懇念によって、本山は護持されていたのです。
講社の特徴
講社といえば僧侶や寺族に関係なく、本山直結の門徒集団だと考えている人がおられますが、これは誤解です。元来、講社の講員には僧侶・寺族も含まれているのです。
講社はもともと僧侶と門徒が一つになって愛山護法の思いから本山護持につとめた組織であり、講社は、一ヶ寺・一ヶ処の住職や門徒だけでなく、村・町・郡・国を越えて、相互いに敬愛し、御同朋御同行の信心の行者として行動し運営されていたのです。
講社の名称
講社の名称の一部を紹介いたします。これらの名称をみることによって、その講社がどういうものなのかまた、本願寺が講社によって支えられてきたことがわかります。
(A)寄合談合の行われる日をとったもの
講の集合日から名づけられたもので、1日(朔日講)から月末(晦日講)まで全てあります。
(B)本山・別院・寺院へ進納する物品や寄合や法要儀式における講衆の役割からとったもの
仏飯講、和讃講、番方講、馳走講など
(C)女性にちなんだ名称
女房講、尼講、女人講など
(D)本山や宗祖、聖徳太子への報恩や御法義讃嘆相続のための名称
智恩講、冥加講、報恩講、真実講など
(E)人数を冠にした名称
十人講、十八人講、三十人講、百人講など
(F)土地名を冠にした名称
加賀講、福井講、岡山講など
(G)A・B・C・D・E・Fの2つ以上を冠にした名称
羽水組十九日講、泉州接待講、摂津十三日講など
※(G)名称が大半ですが、他にも、別院護寺の講社、各寺院名を付した講社などがあります。
護り、伝えていく
講社は、親鸞聖人がお示しいただいた阿弥陀如来のご本願の救いをいただかれた方々が、蓮如上人のお勧めによって、寄合い、集い、組織化され、困難な時代においても、本願寺を護り、物心両面に渡り支えていただいた長い歴史と伝統があります。
2023(令和5)年には宗祖ご誕生850年、2024(令和6)年には立教開宗800年という記念すべき年をお迎えしご勝縁を頂く中で、いよいよ浄土真宗の教えを広めるため、精一杯努めなければなりません。そのためにも、一人ひとりが健康に留意いただき、先人が守り伝えてきた講を大切に護持し、ご家族や、ご縁のある方々、次の世代へ伝承していきたいと切望しています。